ヴァレンタインデーを次の日に控えた日曜日の11時頃、玄関のインターフォンが鳴った。
この部屋の主である氷室零一が玄関の扉を開けると、婚約者である彼女が一日早く手作りのチョコ菓子を持って嬉しそうに立っていた。


「白い世界の中で」

窓ガラスの下の方は結露が出来ていて、リビングの透明なガラスを曇らせていた。
設定を常に20度にしてあるこの部屋と外では、かなりの温度差が生じたせいだった。
晴れた日ならすでに暖かくなっている時間帯なのに、灰色の重い雲が垂れ込めた天からは陽光は一筋も指してはくれなかった。朝から空はどんよりと曇り、氷の世界を作り上げていくようにどんどん冷えていく。
昼を過ぎた頃には粉雪が舞い落ちてきた。
窓から外を眺めていた零一は静かに言った。
「今朝の気象予報通りになったな・・・。」
丁度、昼食の後片付けを終えて、ティーカップと共に温かい紅茶をトレーに乗せて運んできた女の子が「そうですね。」と背後で相槌をうった。
大学に入ってから切らずに伸ばし始めた髪は肩甲骨まで届き、零一が高校3年間彼女の担任を務めていた頃に比べるとかなり大人っぽくなっていた。V字にカットされた胸元から鎖骨が艶めかしく覗く薄手のセーターを着て、丸みを帯びた腰のラインを包んでいる。ショートパンツから伸びた足には厚手の黒のタイツを覆(は)いていた。柔らかな微笑みが、当時の幼い面影を少し残しているが、彼女は徐々に大人の女性に近づきつつあった。
女の子が初めて零一と出会ってから、もうすぐ7年の月日が経とうとしている。
零一は、最近下ろしていた前髪を、櫛(くし)で梳(す)いて上げるようになった。もうすぐ結婚をするのだから、落ち着いた雰囲気にした方がいいと考えたせいだ。確かに前髪を上げるとかなり変わるが、11歳も年が離れている婚約者の女の子には理解しづらかった。入学式の時から20台後半の年齢に似合わず、かなり厳しい指導で有名な数学教師だったからだ。


色素の薄い髪と同じ色の瞳が窓から見える景色を映して、彼女は「傘を持ってきて良かった・・・。」と呟いた。
白磁のポットには、零一がスーパーマーケットで買った得用のティーバッグではなく彼女が用意してきた茶葉が入っていて、注ぎ口から小さな湯気を出していた。
女の子はトレーごと磨かれたガラステーブルの上に置くと、ずっと外を眺めている零一の元へと近寄った。
窓の冷気を直接感じて寒いだろうと思いソファに座るように促したが、何故か感慨に耽(ふけ)っている零一を気にかけて黙って傍に寄り添うように並んだ。
薬指に五枚の花弁が開いた指輪を嵌(は)めた左手でガラス窓に触れると、ひやりと射すような感触が伝わる。
エアコンから出る暖房の風に顔を当てられて頬は桃色に染まっていた彼女は、それが逆に心地良かった。
高層マンションの上階から色素の薄い瞳が彼と同じように外を覗くと、いつの間にか雪が家々の屋根を真っ白に染めていった。
「わー!これなら明日の朝には大きい雪だるまが作れそうですね!」
彼女は横に立つ零一にはしゃぎながら言うと、彼は眉根を小さく寄せた。外見が大人びてきても中身が伴っているわけではないと、彼は呆れた。
「・・・一つ質問したい。君は後一ヶ月も経たない内に大学を卒業するのに、まだ雪だるまを作りたいのか?」
ガラス窓に両手をついて外を眺めている女の子は、呆れながら尋ねた彼に無邪気に訊き返す。
「はい!だって雪が積もることなんて最近は滅多にないですから!・・・あれ?零一さんは興味ありませんか?」
高校生の時担任だったせいで、恋人になっても言葉遣いは丁寧なままだった。
零一はきっぱりと否定した。
「無い。全く無い。君も子供みたいな行動を取らず、落ち着いたらどうだ?第一これだけ寒いと風邪をひいてしまうだろう。」
しかし、女の子は彼の苦言をさらりと聞き流して、ガラスに鼻が当たるまで近づいて嬉しそうに外を見つめていた。
「たくさん積もるといいなあ〜・・・。」
その姿は、まるで明日の遠足を待ちわびる小学生のようだった。
「・・・君はのんびりしすぎだ・・・。」
苦笑しつつもとても幸せそうな微笑を浮かべながら、零一は会話をそこで中断し「冷めるぞ。」と一言だけ言うと、彼女の背中に優しく手を添えながら、紅茶の置いてあるテーブルへと向かった。

ソファに座る前、彼は思い出したことを付け加えた。
「今日は雪で道が混みそうだから、早めに出発する。」
色素の薄い瞳が悲しそうに揺らいだのは一瞬だった。
「はい。」
すぐに彼女は静かに微笑んで返事をした。

雪は止む気配が無い。
それどころか降る量が段々多くなっていくようだった。
はばたき市が凍りつくような寒さに包まれていく中、暖かい部屋で二人はお互いの温もりを感じながら恋人同士の時間をゆっくりと楽しんだ。


帰る時刻になった彼女は、急いで身支度を整えた。
門限が6時の彼女を車で家まで送るのに、零一は時間にかなりの余裕をみた。
いつもの帰る時間より一時間も前に二人でマンションの部屋を出ると、外は雪で真っ白に塗り替えられていた。
「「あ・・・。」」
女の子のみならず、玄関のドアを開けた零一も珍しく声を上げた。
寒風が吹く外はコンクリートの廊下の溝にまで雪がうっすらと積もり、階下を見下ろすと市内は白で埋め尽くされ、モノトーンの世界へと変わっていた。
はばたき市を横切る幹線道路は、車のブレーキランプの赤色が連なって光っている。
どうやら、雪による車の交通渋滞があちらこちらで起こっているらしい。
それをちらりと見た零一は踵を返し、女の子を連れて部屋へと戻った。
「・・・あの?・・・・・零一・・さん・・・?」
「もう一度、交通情報を確認しておく。」
戸惑いながら後ろを付いていく女の子にそれだけ言うと、彼はさっさと靴を脱ぎ中へ入ってリビングに置いてあるテレビをつけた。
丁度、雪による交通機関の遅れを知らせていた。
はばたき市内は積もった雪のせいで、電車は一時止まってしまい、高速道路は全面通行止めとなり、それ以外の道路ではスリップ事故や玉突き事故などで渋滞が発生し、そのせいで、バスも動けなくなっていた。駅ではタクシーを待つ人々が寒さに身を震わせながら列を作っている映像が流れていた。
「・・・やはり、かなりの渋滞が起きているな・・・。」
と、言ったきり彼は黙り込んだ。どうやら車で送ることを逡巡しているようだ。
廊下から下を覗いた時、マンションに面している大通りを行った先で通行が禁止されて通れないよう交通整理をしている警察官の姿と車が何台も方向を変えて止まったいるのが見えた。雪の中でスリップした車が前の車を追突し、車の玉突き事故が発生したらしい。次々と牽引された事故車が現場から連れ出されていく。
時間を短縮しようと脇道に逃げようとも考えたが、その事故現場が脇道へと入る場所だった。
『反対側から大回りして行くか・・・。ただそちらも渋滞は発生している。』
零一が腕組みをしたまましばらく黙っていると、女の子がすぐ傍で言った。
「零一さん、私歩いて帰ります。車よりそっちの方が早いですから。」
いきなり、零一の意識は現実に戻り、慌てて反対した。
「ばかを言うな。こんな雪の中を君を歩いて帰らすわけにはいかない。」
「大丈夫ですよ。渋滞もすごいですし、この雪じゃあ車を走らせるのも大変です。」
冬はスタッドレスタイヤに履き替えてあるから心配するなと何度も説得しようとしたが、彼女は万が一この大雪で事故でも起こしては大変だから、と逆に零一の身を案じた。
「君は俺の運転を信用していないのか?」
いつの間にか零一は語気を強めていた。優良運転者(ゴールド免許)としての自負ではなく、最愛の人が自分を信頼していないのかと悲しくなったからだ。
「違います。はば学にいた時から零一さんの運転は安心しています。でも雪で他の人の車がブレーキきかなくて追突事故に遭(あ)う場合があります。・・・私はそれが心配なんです。」
心から零一の身を案じる声に、彼は安心させるようにきっぱりと言い切った。
「問題ない。雪が降った場合に備えてもシュミュレーション済みだ。」
こういうことも、昨夜天気予報を見た時から想定の範囲に入っている。事故を起こさない自信が彼にはあった。
けれど、彼女の言うようにあちこちで交通渋滞が発生しているので、門限の時刻に彼女を送っていくには歩いて帰る方が確実な手段ではある。彼には門限は絶対守らなければいけない彼女の両親との約束だった。
その時、女の子の表情に小さな苛立ちが含まれていることに彼は気づいていなかった。なおも悩んでいる零一を見て、彼女は悲しそうに呟いた。
「どうせ、零一さんは私を門限に間に合わせるように帰したいだけなんでしょう?」
彼は自分の考えてることを見透かされたような気がした。

女の子が高校を卒業した日、やっと零一は愛を伝えた。
初めて恋人としてドライブに出かけた彼女を家に送った時、両親に担任の教師としてではない挨拶を済ませ、結婚の意思と彼女を帰す門限の約束までした零一は、4年間一度もそれを破ったことはない。
女の子が大学を卒業すると同時に自分と結婚するにも関わらず、彼は頑なに守り通していた。
恋愛の経験不足からキス以上から発展することが出来ず、生真面目な性格のせいで親公認でも泊りがけの旅行を考えることなど思い浮かばなかった。彼女にはそれが零一らしくもあるが、反面寂しいことでもあった。
手を出さないと言うことは、自分がいつまでも教え子として扱われているのではないかと思ってしまうからだ。

彼女の投げかけた言葉を、自棄(やけ)になるわけでもなく、零一は素直な反応を示した。
「では、私が送って行こう。」
「えっ・・・・?」
彼はいつも通勤に使う黒のコートを羽織って、そのポケットから皮手袋を出した。
「・・・あの・・・、先生、この雪じゃあ、すごく濡れてしまいます・・・。」
呆れるか怒るかするかと思っていたが、真面目な顔つきで零一は答えた。
「そんなことは構わない。君を一人で帰らす方が俺は心配だ。」
躊躇(ためら)う女の子に有無も言わさず、二人はマンションの前の通りに出た。
雪は一向に止む気配がなく、夕方なのに歩いている人がいない歩道はひっそりと静まり返っていた。道路は泥と雪とが混じり合い、ぐちゃぐちゃにスプーンで掻き回された溶けかけのシャーベットのようになっていた。時折その上を、ヘッドライトを付けた車が雪を踏みながら走る音が響くぐらいで、まるで音までも白の中に吸収してしまったように感じる。
歩道は誰かが歩いた足跡の上を次に通る人が踏みしめて歩くせいで、雪はほとんど積もってはいないが、白い膜のように覆(おお)われた雪は寒さで凍りつき、スケートリンクのようにツルツルと滑ってしまう。更にその上から新しい雪が重なるので、見た目は雪が積もったものと勘違いするが、歩き出すと滑って転ぶ人がいた。。
表面が氷になった歩道を二人はゆっくりと進む。いくらうっすらと黒い地面が見えていても、力を入れて歩かなければならず、普段のようにさっさと歩けなかった。しかも上空から降る雪は雨と違って軽く、傘を差していても風に乗り身体に纏わり付く。零一の銀縁の眼鏡のガラス面にも付き、すぐに水滴に変わった。長身を包む黒のコートの上にも白色がかなり目立つようになった。

膝丈ぐらいまであるロングコートを羽織っている零一と比べて、女の子はショートのコートに膝上のパンツにロングブーツといういでたちだった。いくら厚手のタイツを履いても気温が下がっていく夕方では足先から凍えていくように寒かった。握り締めた彼女の手も徐々にかじかんできた。
「よりによって何故こんな日に・・・。」
零一は防寒を考えない女の子の服装に文句を言いつつ、かなり心配していた。このまま一緒に帰ったとしても家に辿り着いた時には、風邪をひいてしまう恐れがあるからだ。
『・・・・・・・・・・・・・・。』
黙り込んだまましばらく歩き続けたが、マンションから50M先の信号まで来た時、零一はあっさりと予定の変更を告げた。
「・・・今日は俺の家に泊まれ。ご両親には俺から事の経緯を話しておく。」
「えっ?」
驚いている女の子の肩を強く抱くと、零一はさっさと来た道を戻る。
彼を横目で見上げると、眉間に深い皺を寄せて厳しい表情をしている。
先程言った自分の我が儘で怒ったと思った女の子は、咄嗟に謝ることも出来ず不安気に地面を見つめながら滑らないように付いていった。

マンションに着いても零一は一言もしゃべらず、玄関のドアも黙って鍵を開けた。
「あ、あの零一さん・・・やっぱり怒ってるんですか?」
恐る恐る女の子は静かになった理由を訊いてみたが、答えは返って来なかった。
彼はリビングの扉を閉めると、水滴が付いた眼鏡を外しリモコンでエアコンの電源を入れる。
暖かい風が吹き始めたことを確認すると、女の子の方へ振り向き頭や肩に付いた雪を手で払おうとした。
しかし彼女に触れた時、長い髪が思いのほか濡れていることに気づいた。
「ちょっと待っていてくれ。」
やっと、ソファの傍に佇む女の子に向かって発した言葉は、短く簡潔だった。
零一は自分のコートを脱いでソファの背にかけ、薄暗い廊下を歩いて行ってしまった。廊下の奥はバスルームになっている。
一分も経たない間に折り畳まれたタオルを何枚か持って戻ってくると、一枚を頭に乗せ少し乱暴に両手でかき回した。そして別の一枚で濡れたコートの肩に付いた雪や、袖に染みた水を丁寧に拭き取っていった。上着の水分を吸ったタオルは、無造作に先程紅茶を飲んでいたガラステーブルに積んでいく。
「あの、零一さん、ありがとうございます・・・。」
母が子供にしてあげるような、どこかくすぐったいような行為だった。
寒さで震えた身体で、女の子はお礼を言った。
「風邪をひくと大変だからな・・・。」
背中を拭き終えた零一はそう呟きながら、前に回って女の子の膨らんだ部分を冷静に拭き始めた。
「・・・・えっ!?」
一瞬彼女の身体が硬直する。
「・・・ん?どうした?・・・やはり、まだ寒いか?」
「い、いえ!何でもありません!!」
風邪をひかせない目的以外に零一に他意は存在しない。性的な理由など思い浮かべることがないとわかってはいるが、女の子はどうしても彼の手が触れている部分を意識してしまった。心臓が早鐘を打ち出した。暖房が直接当たってもいないのに、彼女の頬が紅を引いたようにうっすらと桃色に染まる。
胸を拭いている零一に心臓の鼓動がばれないようにと願いながら、ぐっと手に力をこめた。

零一は緊張している女の子の態度を気にも留めず、真面目な顔でやっと理由を切り出した。
「今朝の天気予報を見て、積雪の可能性があるということは知っていた。だから雪が降り出した昼食後、君をすぐにでも車で家まで送ろうと俺は思っていた・・・。
・・・・だが、君が俺を見つめて幸せそうに笑っているから・・・。・・・そんな君を俺もずっと見ていたくて・・・
・・・結局、俺は君を帰すことが決断できなかった・・・。」
それであの時物思いに耽(ふけ)ったように、ずっとガラス窓越しに外を見つめていたのか、と女の子は思い至った。
『あれは、そういうことだったんだ・・・。』
色素の薄い瞳が、先程零一が佇んでいたガラス窓を見つめている。まるで一枚絵のように、窓の向こう側は沢山の雪が舞っている。彼の心は、こんな風に乱れていたのだろうか、とぼんやりと考えていた。
「もしこのまま雪が降り続いて積もっても、二人で過ごす時間を早めに切り上げて家を出たら門限の6時に間に合うだろうと思った。また、間に合わせる自信もあった。だが、テレビの天気予報を見た時、俺の頭に小賢しい考えが浮んだ・・・。君と過ごす時間を長引かせて万が一遅れたとしても 、この雪のせいにすればご両親への言い訳も立つ、と・・・。」
「え・・・・・?」
女の子が”彼らしからぬ”考えを抱いていたことに驚いて見上げると、苦々しいものを口に含んだように眉間に皺を寄せて、零一は自嘲気味に笑っていた。
「・・・だが、まだ門限に間に合うようにしなければいけない気持ちの方が勝っていた。だから余計なことを考えないように頭の隅にそれを追いやり、風邪をひきかねない徒歩以外の方法で、どうやったら君を時間までに帰せるか必死に考えていた。俺は君と一緒にいたいという気持ちを忘れ、門限ことで頭が一杯になった・・・。」
外の真っ白な世界が、まるでこの部屋の音も吸い取ったように静かだった。ただ、零一の言葉だけが響く。

「・・・そんな時だ。君が呟いたのは・・・。
あの一言は痛いところを突かれてしまった・・・。」
彼女の言葉は、自分を恋人と、婚約者として認めているのか分かり難い零一を暗に責めていた。

「俺は、確かに君のご両親に挨拶した手前、門限を守らなければならない。だが・・・」
零一は言いかけた言葉を一度遮った後、腰を屈めて彼女の目線と合わせた。
眼鏡を取った端整な顔が間近に迫ると、女の子の心臓が一度大きく跳ねた。

「・・・・後一ヶ月もしないうちに君は俺のものになる・・・。
・・・だからせめて今夜ぐらいは大目に見てもらうつもりだ。
俺は、今更君を手離す気などないからな。」

言い終えると彼は、女の子をゆっくりと抱き寄せた。彼女の身体は氷で作られたように冷たかった。
「こんなに冷えて・・・。やはりさっさと決断すべきだった・・・。
君の気持ちを大切にするよりもご両親への約束を優先した俺が悪い。
・・・・本当にすまなかった・・・。」
震える二本の手が零一の大きな背中に回され、ぎゅっと力が籠(こ)められる。眦から一筋の涙が冷えた頬を伝い落ちたが、女の子は幸せそうに笑んでいた。お互いを強く抱き締めていたが零一は身体を拭いている最中であることを思い出し、縋り付いていた女の子を優しく引き離した。
「そうだ。早く衣服の水分を拭き取らないと、君が風邪をひいてしまう・・・。」
再び肩から胸へ胸からへそまでタオルが下りていく。いくら厚手のコート越しでも、柔らかな膨らみはその動きを感じてしまう。
「あ、あの・・・零一さん・・・。」
緊張の度合いが一気に増し、女の子は頬を赤らめて弱々しく零一の名を呼んだ。
「少しの間我慢していてくれ。もうすぐ水気を吸い取れる。そうしたら君は風呂が沸くまで俺の服に着替えてここで待っていろ。部屋もじき暖まる・・・・・・・・・・・・・・・・ん?」
話をしながらふと自分が手が触っている場所を見た途端、彼は固まってしまった。
「・・・・・・・・・・・・・・まさか・・・・・・・・・・。」
無意識とはいえ、どこを触っているのか拭いている本人もようやく気付いたようだった。
「はい。その”まさか”です・・・。」
女の子が困りながら微笑み、小さく頷いた。
「うわあっ!!」
彼はこちらが驚くほど大きな声で叫んだ後、慌てふためきながらも必死に謝った。
「違う!!君に風邪をひかせないようにしなければと思っていただけで、他意はないっ!!断じてないっ!!」
まだ暖房の暖かさは行き渡らない内に、零一は耳まで真っ赤になっていた。
その様子を黙って見ていた女の子は、色素の薄い瞳を潤ませながらもう一度零一の胸に笑顔で飛び込んだ。
バランスを崩して倒れこんだ二人の身体を硬質のソファが受け止めた。



FIN


<あとがき>
本当は時期的に氷室先生のヴァレンタインSSだったんですが、話を変えて雪で閉じ込められたらてんてえはどんな扉が開くか?(笑)というお話になってしまいました!\(≧▽≦;)
電車で通っていたなら泊まるということも出来たのですが、 氷室先生は主人公ちゃんの家が通り道(笑)
車以外なら、どうやってもバスか歩きしかないという経路です
まあ、雪で閉じ込められて出られない話で、葉月くん・天童くんならむしろ泊まっていけと、絶好のチャンスを逃さないぞと(笑)、確実になります!千晴くんも葛藤しつつも泊まらせますよね〜
どうしたら主人公ちゃんを雪という言い訳で止められるんだろう?と必死で妄想しまくりましたさ!\(≧▽≦)/
それを何とか文章化したかったんですが・・・まあ、あまりそんな葛藤書けなかった中途半端な内容になってしまったという・・・(^^;)
実は大阪でも雪が積もったり、ずっと日中も降り続き、すんげえ寒かったんです!
入り口が開けっ放しな仕事場なんで「パトラッシュ・・・僕、もう疲れたよ・・・」という状態でやけになって1日で、しかも仕事中に(笑)書き終えました(--;)だから、オチも何も考えないまま突っ走りました!
むしろ鬼畜な眼鏡が出てくるBLゲームを堪能していたおかげで、官能的に書きたくてうっかりこのサイトがあらぬ方向へ行きそうになっちまいました!!いや!禁断のバベルの塔建設してもいいけど!(とりあえず落ち着け)
こんな(心は)乙女(たまに腐女子)なSS、読んでくださると嬉しいです!(^▽^)感想などもございましたら、ぜひ〜♪(^▽^)
<2011/2/15>

最後まで読んでいただいてありがとうございました!
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